米グーグルがAP通信(Associated Press)にコンテンツ料を支払うことで合意したというニュースが流れ、世界中のマスコミの電子媒体担当者は事実関係の確認を急いでいるに違いない。今回の合意で問題となるのは支払いの対象となるサービスだ。米グーグルのホームページにはこの件に関する発表はなく、契約内容などは確認ができないので、各種報道から事実関係を探るしかないが、「グーグルニュース」とは関連性は持たせないだろう。一部報道ではグーグルが始める新サービスに対応して提供するコンテンツに対してと限定している。
ニュースメディア側としてはグーグルニュース向けのコンテンツに対して対価を求めたいところだろうが、もし、グーグルがこれに応じたら、グーグルニュースはビジネスとしては成立しない。世界数千社からニュースを収集しており、コンテンツ料を支払うということになれば、その総額は巨額だ。
ニュースメディア側にも弱みがある。フランスの国営通信社、AFPはグーグルニュースで同社のニュースを利用されたとして、グーグルに対し損害賠償を求める訴訟を起こしており、グーグルもAFPのニュースをグーグルニュースからはずしている。だが、こうしたニュースメディアは少数派である。
大多数のメディアはユーザーを自社のサイトに誘導するための機能をグーグルニュースに期待している。記事見出しのリンクを提供し、メディアによってはサイトにグーグルのアドワーズ広告を配置する。メディアのサイトにユーザーが集まり、グーグルの広告がクリックされれば、メディアには広告収入が入る。グーグルはメディアのサイトの集客に協力するというスタンスで、グーグルニュースへ参加をよびかけてきた。
グーグルがこれまでの方針を変えて、グーグルニュースを対象にコンテンツ料を支払うとなれば、AFPとの裁判にも影響が出る恐れもある。
ニュースメディアがビジネスとしてポータルに情報を販売するケースはこれまでにもあった。NTT系のgooやヤフーのニュースはニュースメディアに一定額を支払って利用しているケースが多い。通信社は比較的、コンテンツ販売に積極的だ。想像するに、今回のグーグルとAP通信のケースはこの範囲ではないだろうか。グーグルニュースの場合はニュースの見出しと抄録程度だが、今回は本文の提供も受けて、グーグルのサイト上に置くのだろうと推察する。さらに言えば、形式的には対価の支払いを対象を新サービスとするが、これでグーグルニュースについても了解を得るとしているのかもしれない。
若者の活字離れ、インターネットの普及による情報の無料化の流れのなかで、ニュースメディアの経営は厳しくなっている。しかし、インターネット時代に対応したニュースメディアのビジネスモデルは見当たらない。ニュースメディアがポータルを志向した時期もあったが、検索サイトに圧倒されているのが現状だ。
検索ポータルが登場して以来、ニュースコンテンツに対する著作権をめぐっていろいろな議論があった。検索サイトはニュースも検索対象にしているので、ユーザーの検索結果画面にニュースサイトの見出しが表示されることもある。著作権侵害との主張もあった。ところが、現実にはこうした検索結果からユーザーがニュースメディアのサイトに集まることが多いので、ニュースメディア側も検索サイトと真っ向からぶつかることは避けてきた面がある。検索サイトと本格的に戦うなら、グーグルなどによるメディアサイトへの検索ロボットの巡回をシステム的に遮断し、一方でそのような行為を違法として提訴すればよいが、集客をポータルに依存している現状もあるのだろう。
だが、このまま検索ポータルのやりたいようにさせていたらニュースメディアはさらに窮地に追い込まれる。今回の件がきっかけになるかどうかは不明だが、近いうちにより深い連携を進めるのか、敵対的に戦うのか大きな転換が起きるに違いない。